地球・気候プレプリントシミュレーション1分で読めます

流体力学なしで雲をつくる

パイプの中の水を、分子を1つ残らず追跡してモデル化しようとする人はいない。流体力学の法則が同じ仕事を、「データセンターではなくノートパソコンで」こなしてくれるからだ。しかし地球の大気は非常に複雑な流体なので、その法則でさえ再びデータセンターを必要とする。これが、トーマス・デウィット(Thomas DeWitt)の博士論文の出発点だ。この論文は、ティモシー・ギャレット(Timothy Garrett)の指導のもと、ユタ大学大気科学科に提出された。

数字は途方もない。気象モデルが数値的に厳密であるためには、格子が約1ミリメートルのスケールにまで達しなければならない。そこまで行って、ようやく渦巻く運動が消える。現在最も進んだキロメートルスケールのモデルでも、関係するスケールの範囲の半分未満しか解像していない。次世代の気候モデルでさえ、各格子箱の中にある約10¹⁸個のミリメートルスケールの循環を近似しなければならない。下層大気の温度場をある一瞬について保存するだけで、約10²⁹バイトが必要になる。そして論文が指摘するように、モデルがますます精密になっているにもかかわらず、気候感度についてのモデル間のばらつきは40年間縮まっていない。

一段上の法則を探して

デウィットの問いはこうだ。流体力学が無数の分子から生まれるのと同じように、天気と気候にも創発的な法則はあるのだろうか。彼の答えは、ある対称性から始まる。スケール不変性だ。広い範囲にわたって、あるスケールの大気は、別のスケールの大気を引き伸ばしたもののように見える。

最初の数章(そのうち2章はすでに学術誌Atmospheric Chemistry and Physicsに掲載されている)は、この対称性がしばしば測定上のアーティファクトによって隠されてきたと論じている。衛星画像の端で切れた雲は、見かけ上のサイズの上限を生み出し、測定値を20〜30%偏らせることがある。雲の中の穴は、そのフラクタルな形状を測る通常の方法を歪める。また、気象観測気球やドロップゾンデによる風の測定値には、スケールに応じて予想される領域の切り替わりが見られない。それらは、ショーン・ラヴジョイ(Shaun Lovejoy)とダニエル・シェルツァー(Daniel Schertzer)が提唱した、単一の引き伸ばされた「異方的」乱流に当てはまる。

タービュロン

第5章は、これをモデルに変える。その構成要素がタービュロン(turbulon)だ。古典的な乱流理論の「渦」を、数学的に厳密にしたものである。タービュロンは、温度、湿度、エネルギーといった大気のあらゆる場における、同じ形をした局所的なこぶの束で、それぞれが固有の強さをもつ。タービュロンは大きいほど平たく、引き伸ばされた乱流の法則に従う。そうすると、雲の場とは、あらゆる大きさの無数のタービュロンを積み重ねたものにほかならない。

STEAM(Superposition of Turbulons and Eddies Atmospheric Model、タービュロンと渦の重ね合わせ大気モデル)は、最大のタービュロンから最小のものへと順に進み、それぞれの大きさで摂動を加えていく。そのうえで、水がどこで凝結して雲になるかを計算する。ナビエ-ストークス方程式を解くことは一度もなく、時間ステップもない。入力として必要なのは、水分とエネルギーの平均的な鉛直プロファイルと、いくつかの定数だけだ。

青空の下、穏やかな海の上に浮かぶ白い積雲の写実的なレンダリング画像。

STEAMでシミュレーションし、レイマーチングでレンダリングした積雲の群れ。— 図5.1、DeWitt (2026), arXiv:2609.30589.

本物にどこまで近いか

デウィットは、330回のSTEAMシミュレーションを、2つの熱帯観測キャンペーンを再現した超高解像度シミュレーション(それぞれ10億以上の格子点をもつ)や、ある国際相互比較プロジェクトの9つのモデルと比べた。多くの場合、STEAMと基準モデルの差は、基準モデルどうしの差とほぼ同じ大きさだった。とはいえ欠点は明らかだ。下層雲が2〜5倍多すぎること、地表付近の温度の変動が大きすぎること、そして対流圏界面付近に見かけ上の変動のピークがあることだ。最後の点は、STEAMが平均プロファイルの急な変化を読み取っても、その向きは読み取らないために生じる。モデルに雨がないため、雲水が濃い中心部で高く積み上がりすぎてもいる。

驚きは宇宙からもたらされる。72枚の衛星画像と比べると、STEAMの雲の形状、つまり縁のギザギザ具合や大きさの分布は、モデルのある設定において、基準シミュレーションと同等かそれ以上に観測と一致した。STEAMとの食い違いの一部は、基準モデルの弱点を明らかにしているのかもしれない、と著者は示唆している。

海上の雲の場を描いた3枚のパノラマレンダリング。薄く散らばった雲、より厚い雲の帯、そしてそびえ立つ積雲。

タービュロンが丸くなるスケールを10、30、100メートルに設定した同じシミュレーション。薄く散らばった積雲から、そびえ立つ雄大積雲まで。— 図5.12、DeWitt (2026), arXiv:2609.30589.

100万倍安い、ただし条件つき

デスクトップコンピューターで、基準モデルCM1は100日分のシミュレーションに約29日の計算を要する。それに対応するSTEAMの場は1.7秒で得られる。STEAMは独立したスナップショットをそれぞれ、スピンアップなしで直接生成するため、デウィットはスナップショット1回あたり10万倍から100万倍安いと見積もっている。

その代償は、論文自身がはっきり述べている。STEAMは自らの平均状態を予測せず、別のモデルから借りてくる。「丸さ」のスケールはシミュレーション全体で固定されているため、深い嵐と薄い上層雲が同じ領域に共存することはない。そして時間がないため、明日の天気を予報することはできない。その強みは統計にある。論文は、天気と気候のシミュレーションにナビエ-ストークス方程式は「実は必要ないのかもしれない」と結論づけている。今のところ、それはこれから発展させられるのを待つ提案にとどまっている。

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