潮の満ち引きを感じる宇宙線
宇宙からやってくる宇宙線が大気にぶつかると、ミューオンと呼ばれる粒子が生まれ、地上に雨のように降り注ぐ。ミューオンは丈夫で、厚い岩や水の層を通り抜けられる。丈夫だが、無敵ではない。通り抜ける物質が多いほど、たどり着く数は減る。山やピラミッドや火山の下に届くミューオンを数えれば、頭上にどれだけの質量があるかがわかる。これがミュオグラフィだ。
大きく動かない物体を追うのと、1時間ごとに数メートルしか変わらない質量を追うのとでは話が違う。後者にははるかに高い精度が必要で、しかもミューオンの流量は大気の温度や気圧によっても揺らぐ。ソウルの中央大学校(Chung-Ang University)のチームは、理想的な試験の場を見つけた。海そのものだ。
潮の下のトンネル
韓国の保寧(ボリョン)海底トンネルは、朝鮮半島西海岸沖の海の下を6.9キロメートルにわたって走る。そこでは潮が約4メートル上下する。トンネル沿いのある地点、ステーション5593では、頭上の岩が最も薄く(26メートル)、海水が最も深い(33.8メートル)。チームが検出器を置いたのはそこだった。
検出器はシンプルだ。1メートル×0.5メートルのプラスチック板2枚を、42センチメートル離して重ねたもの。両方の板を通過したミューオンは、それぞれの板に光の閃きを残す。検出器は2025年8月11日から9月12日まで、31.6日間休みなく動き、約190万個のミューオンを記録した。1時間あたりおよそ2,500個だ。
数は海に従う
1時間ごとのミューオンの数は、潮と歩調を合わせて増減する。海面の高さを鏡に映したような動きだ。満潮ならミューオンは少なく、干潮なら多い。6.6キロメートル離れた公式の検潮所の記録との相関は強い(r = −0.85)。
- 検出器の上の海が1メートル増えるごとに、ミューオンの数は1.72%減る。トンネルのコンピューター・シミュレーションは1メートルあたり1.89%と予測しており、測定値に近い。
- 支配的なリズムは、およそ12時間半ごとに繰り返される。月が引き起こす主要な潮だ。大潮と小潮が入れ替わる2週間の周期も現れる。
- 月で最も強い潮のときには、数が平均より9%近く上がった。数時間のあいだ、頭上の水が約5メートル少なかったことになる。
- モデルに気圧と気温を加えても、測定できるほどの変化はなかった。信号は水から来ている。
チームはまた、同じ持ち運びできる検出器をトンネル全体にわたって10回運んだ。ミューオンの数は最も深い中央部の下で減り、両側の入口に向かって回復する。岩だけのモデルではこの分布を再現できない。海水を含める必要がある。
7分先行
解析で驚かされた点が一つある。検出器は、保寧の検潮所より約7分早くそれぞれの潮をとらえる(2.6シグマのずれ)。沿岸の六つの検潮所と比べると、この遅れは緯度に沿っている。6.6キロメートルにわたるこの差は、秒速約16メートルで進む潮に相当し、著者らはこれが浅い沿岸の海を進む潮と矛盾しないと見ている。
測るのではなく、量る
検潮所が記録するのは、一地点での水の高さだ。ミューオンがすることは違う。検出器の上にある物質の柱全体を量るのだ。著者らは次の段階を提案している。各ミューオンの飛来方向を再構成して、全質量の変化と、その質量がどこにあるかの変化を区別することだ。潮にとどまらず、荷重が時間とともに移り変わるあらゆる自然のシステムを、同じように下から、触れることなく見守ることができるだろう。
