アルキメデスの輪切りが成り立つのは球だけ
論文はひとつのパズルから始まる。直径100の円板を、幅1の無限に長い帯99本で覆うことはできるか。 上海交通大学数学科学学院の頼米佳(Mijia Lai)によれば、その解答は「2000年以上前の、アルキメデスの『エウレカ』の瞬間のひとつへと私たちを連れ戻す」。
位置を問わない帯の面積
アルキメデスの定理。 半径1の球の上で、どちらも球と交わり、距離hだけ離れた2枚の平行な平面にはさまれた領域の面積は2πhである。
この公式で驚くべきなのは、何が含まれていないかだ。それは帯がどこにあるか、である。赤道付近でも極の近くでも、効いてくるのは間隔hだけだ。
論文が示すパズルのヒントは、帯を平らな円板から球の上へ持ち上げることだ。そこで帯は球の上の帯状の領域になる。このヒントに従って公式を使えば答えが出る。直径100の球は半径50で、表面積は4π × 50² = 10,000πである。幅1の帯1本が覆うのは2π × 50 × 1 = 100π。99本合わせても最大で9,900πで、足りない。つまり、帯で円板を覆うことはできない。
逆向きの問い
この性質は球を特徴づけるのだろうか。凸曲面、つまりへこみのない形について、しかもこの性質があらゆる間隔で成り立つことを要求する場合、答えはずっと前から知られている。論文はそれをブラシュケ(Blaschke)にまでさかのぼる。数学者のモハンマド・ゴミ(Mohammad Ghomi)は2017年10月、フォーラムMathOverflowでより鋭い問いを投げかけた。2枚の平行な平面がどちらも凸曲面と交わるときに、その間の面積がある1つの決まった間隔について常に同じなら、その曲面は球でなければならないのか。
頼は、球でなければならないことを証明し、さらにその先まで進んだ。
定理A。 空間内のなめらかで閉じた連結な曲面をとる。曲面の最も細い幅より小さいある間隔hがあって、幅hのあらゆる切片が(あらゆる方向で、2枚の平面がどちらも曲面と交わるあらゆる位置で)面積2πhをもつとする。このとき、その曲面は半径1の球である。
凸性は仮定されていない。それは結論の一部なのだ。
2つのステップと、波を経由する回り道
まず、へこみがないこと。 切片の条件は幾何学的な帰結をもつ。曲面が外側の包絡面から離れて内側へ曲がりこむ場所では、平均曲率と呼ばれる量がゼロ以下になることを強いる。頼は、この種の方程式の古典的な道具であるホップの最大値原理(Hopf maximum principle)を使って、これが矛盾を生むことを示す。へこみが許されなければ、曲面は凸でなければならず、実際にはすべての点で外側へ曲がっている。
次に、球だけであること。 凸曲面では、切片の条件によって、高さに応じた面積の分布の仕方が間隔hごとに繰り返されることになる。この繰り返しのパターンをあらゆる方向について平均すると、時間的に周期的な波動方程式の解が得られる。その初期値は、曲面が一様に覆われていたとしたときに生み出すニュートンポテンシャル(質量や電荷がつくるたぐいのポテンシャル)と結びついていることがわかる。付録で証明される、こうした周期的な波についての一意性の結果によって、このポテンシャルは曲面の内側でも外側でも一定でなければならなくなる。ライヒェル(Reichel)による既知の対称性定理によれば、そのようなポテンシャルを生み出せるのは球体だけである。最後にアルキメデスの公式が、その半径を1に定める。
これとは別の初等的な節では、ある方向での曲面の幅が間隔hの整数倍になっている特別な場合を扱っている。
AIの助け
著者は謝辞の中で、AIシステムChatGPT 6 Astraに「証明の戦略についての支援」を感謝している。そのうえで、最後の節の初等的な議論はその助けを受ける前に見つけていたと付け加え、証明の検証と執筆に責任を負うとしている。この成果はプレプリントで、まだ査読を受けていない。
円板の上の帯をめぐるパズルから、周期的な波と電荷を帯びた曲面へ。証明はアルキメデスが出発した場所で終わる。幅hの帯と、2πhの面積である。
